VVVFの作り方第4回はダイオードについてです。

前回のコンデンサとインダクタについてはアナログ回路的に考えると非常に難しいものでしたが今回以降はまた別のベクトルでちょっとややこしい話にはなります。ただ、今回の難しいところはVVVFの設計のミソとなる部分なのであまり簡単に説明はするものの、省略はできません。今回の話と次回の半導体スイッチの設計法を読めば電車のVVVFとかチョッパーがなぜ通気性の良さそうな箱に入っているのかってことがわかると思います。

 

 

ダイオードとは

ダイオードって言われて何に使うものか思いつくでしょうか?最近だと省エネ関連で発光ダイオードであるLEDの照明とかが有名なのでなんとなく名前を聞いたことがあるかもしれません。ダイオードを一言で言うと、一方向にしか電気を流さない素子です。しかし、ダイオードの中にはLEDのように光を発してそれ自体が電力を消費させるのが目的のものもあれば交流を直流に変換する回路で使う場合もあり用途は1つではありません。ただ、基本的に知っておく必要があるのは一方向にしか電流を流さないということだけかなと思います。

 

種類

整流用ダイオード

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ごくごく普通のダイオードです。電子回路レベルから整流回路そして半導体スイッチなどの逆電圧保護など多くの個所に使います。

 

ファストリカバリダイオード

整流ダイオードでは電流が流れていた時に逆向きに電流を流そうとすると、ごくわずかな時間は逆向きに電流が流れてしまいます。(この流れる時間を回復時間と言う)この現象を小さくしたのがファストリカバリダイオードです。基本的には比較的高速なスイッチングをする回路に使うかなと思います。

 

ショットキーバリアダイオード

ショットキー現象を用いたダイオードで順方向の電圧降下が少なくてファストリカバリダイオードの回復時間も短いが、逆電流を流そうとすると漏れ電流がほかのダイオードに比べて多く流れてしまうダイオード。他のダイオードよりは効率は良いですが設計上では注意しないといけないと思います。

 

定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)

ダイオードの逆方向に一定以上の電圧を加えると逆向きに多くの電流が流れてしまう特性ツェナー降伏)を使ったダイオード。回路を一定以上の電圧にさせないクランピングを行いたいときに使う。パワー回路でサージ保護に使うこともある

 

パワー系の回路ではこの4種類が多く使われています。なお、整流用ダイオードを組み合わせてブリッジダイオードなどもあります

また、電子回路でよく使うダイオードも一部紹介しておきます。

 

定電流ダイオード

ダイオードにかかる電圧によらず一定の電流が流れるダイオード

 

発光ダイオード

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その名の通り光を出すためのダイオード。整流目的で使うのではなくあくまで発光素子として使うものである。

 

信号用ダイオード

 整流用ダイオードの小型版で小電流の信号を通すことを目的としている。

 

ダイオードの図記号と方向の読み方

ダイオードの図記号は整流用およびファストリカバリダイオードが左ショットキーバリアダイオードが中左定電圧ダイオードが中右発光ダイオードが右です。他の種類については省略します。後者2つの角度とかは図の作者によって多少の差はあります。

ダイオード図

 

ダイオードの用途

ここでは整流ダイオード(整流用、ファストリカバリ、ショットキーバリア)で組まれる回路についていくつか紹介します。他のダイオードはそれぞれ個別の役割があり、上で紹介した通りです。

整流回路

名前の通りの用途で、交流を直流に変換するための回路です。整流回路にはいろいろな種類がありますが、これについてはまた別の回で詳しく書きたいと思います。

昇圧回路

コンデンサと組み合わせてブートストラップ回路などを構成する部品として使われます。

半導体部品の保護

半導体部品には正規の方向以外の向きに電流を流そうとすると破壊されるものがあります。そのような半導体部品と逆向きにダイオードを入れることで逆電圧がかかるとダイオードに電流が流れて、部品を保護します。

 

ダイオードは単純に用途と言って説明しきれないくらいいろいろなところに使われます。ここで紹介したもの以外の回路でも一定方向しか電流を流さない特性を利用するときに使われるということを知っておいてください。

 

 


 

設計方法

電子回路レベルでのダイオードの設計方法は基本的にデータシートに書いている耐電圧耐電流を守れば問題ありません

しかし、パワー回路ではそれが通用しない場合があります。それは、ダイオードに電流が流れると発生する順方向電圧と流れる電流の積による電力損失で半導体の許容温度を超えるというものです。この現象自体は次回の半導体スイッチでも同じようなことが発生します。また、順方向の電流を突然逆方向に切り替えると一瞬だけ逆向きに電気が流れる(以後はリカバリ特性って書きます)ので、逆方向に流れる電流と発生電圧の積による損失も発生します。後者については基本的に周波数が低い回路では気にする必要はありませんが前者は周波数に関係なく考えないといけません。今回はその計算を簡単にしてみたいと思います。

順方向電圧と電流による発熱は一応以下の式で表すことができます。

ダイオード1

順方向電圧については電流によって変化するので厳密に求めたいならデータシートのグラフを参考にしてもらえればよいですが、データシートには最大電流での順方向電圧が書いてあることが多いで基本的にはそれで計算すればよいです。(安全側に働く設計となる)そして、ここで発生した熱は、基本的には空気中に逃げるわけです。空気に逃げる熱量を数値的に示したのが熱抵抗というパラメータです。式の内容としては1Wの放熱をするために半導体と外気温に何度の温度差が必要かというのを表したもので単位は[/W]です。外気温や半導体の耐える温度を以下のように置いて式を立てます。

ダイオード2

単位から考えると簡単だと思います。そしてこの式と先ほどの発熱量の式を組み合わせると

ダイオード3

となり、変形すると

ダイオード4

となり、データシートのパラメータと外気温から損失込みの許容電流を求められます

外気温は夏を考慮して基本的には35から40℃程度で計算します。また、熱抵抗についてはダイオードに放熱板を取り付けない状態での熱抵抗(放熱先が空気)のほかに放熱板を付けた場合に使うダイオード内部とダイオードのケースの熱抵抗などが書かれています。(書かれていないのも結構ありますが…)

例を示してみます。整流用によく使われている1N4007だと順方向電圧が1.1V 空気に対する熱抵抗が110/W で耐熱温度が150℃ 外気温を35℃とすると

ダイオード5

となります。このように小容量の素子でばデータシートに書いてある通りの電流をほぼ流せます。しかし、同じ計算方法でA電流が流れるダイオードの計算をすると放熱板をつけないとデータシートに書かれている最大電流が全然流せない場合もあるので注意が必要です。

次に、リカバリ特性ですが、計算に必要なパラメータがファストリカバリダイオードでない限り書いていないことが多いので計算は省略します。