VVVFの作り方第5回は半導体スイッチです。第4回まで半導体スイッチよりもさらに基礎的なお話をしてきましたが、第5回になってやっとVVVFの根幹部分である半導体スイッチのお話ができるようになりました。(長かった…)鉄道でVVVFと言えばGTOサイリスタとかIGBTとか聞いたことがあると思います。このようにVVVFの種類のように言われるくらい重要な素子というわけです。この章を読めば、なぜ素子の種類によって音が違うのかということやVVVFはなぜメッシュ状のケースに入っているのかということがわかると思います。

 

種類

トランジスタ

正式にはバイポーラトランジスタと言います。トランジスタというと意味的には後のMOSFETなども含んでしまいますが、単にトランジスタというとバイポーラトランジスタのことを指すことが多いです。

アナログ回路では電流を増幅させるために用いる部品ですが、デジタル回路では電流を入り切りするためのスイッチとして使います。また、大電流を扱うことができるトランジスタは特にパワートランジスタと呼ばれています

MOSFETに比べると高耐圧で大電流に耐えることができますが、スイッチの速度が遅いのが特徴です。

また、コレクタ電流(主回路電流)はゲート電流で制御するのでトランジスタの制御回路もある程度の大電流に耐える回路が必要になります。

 

MOSFET

あくまでトランジスタの一種ではありますが、バイポーラトランジスタが電流制御であるのに対してMOSFETは電圧制御でスイッチをします。なので、制御回路には理論的には電流は流れません。ただし、電流が流れないというのはあくまで理論上の話で、実際にはゲート部にコンデンサの要素を持っているため電流は流れてしまいます

また、トランジスタに比べて高速にスイッチができますが構造的に耐圧を上げるとオン抵抗が増加し、発熱の関係で耐電流が大幅に低下するという特徴がありますが、近年は技術の進歩でSicと呼ばれる炭化ケイ素で作られたMOSFETが電車のVVVFでも使われるようになりました。

 

IGBT

トランジスタの高耐圧大電流特性とMOSFETの高速スイッチ性と電圧制御を組み合わせ高耐圧耐電流に耐え、高速スイッチで電圧制御にした部品スイッチ速度はMOSFETより遅くなりますが、高耐圧で大電流に耐えます構造的にはゲート部がMOSFETのトランジスタです。

 

サイリスタ

昔は鉄道分野でもよく使われていた素子です。昔の交流電車で使われていたほかVVVFでも使われていましたが、近年はあまり使われなくなった素子です。

上の3つに比べて高耐圧で大電流に耐えるという特性がありますが、スイッチ速度が遅い他、通常構造のサイリスタでは一度ONにすると何かしらの方法でメイン回路に流れる電流を切らない限り電流が流れ続けてしまうという問題があります。交流回路では電流の波が0になるタイミングがあるので問題ないのですが、直流回路では都合が非常に悪いです。これを改良したものにGTOサイリスタと呼ばれるものがあり、少し前の鉄道車両のVVVFでは非常によく使われていました。GTOサイリスタはメイン回路の電流を切らなくても、制御端子から電流を引き抜くことでメイン回路の電流を切ることができます。なお、電子回路レベルだけでなく、近年は鉄道車両分野でも使われなくなったのでここでの紹介だけにしておきます。

 

図記号と端子

ここで、トランジスタ、MOSFETIGBTの図記号とそれぞれの端子示します。端子名を出さないと以後の説明が大変なのでそれぞれの端子の機能を知っておいてください。


スイッチ図記号

各端子の機能

トランジスタ

B:ベース npn型ではこの端子に電流を流し込み、pnp型では電流を引き出すことでコレクタ,エミッタ間の電流を制御する

C:コレクタ npn型では電流が流れ込む端子で pnp型では電流が流れ出す端子で、ベースに流した電流のhfe倍の電流が流れる

E:エミッタ npn型では電流が流れ出す端子でpnp型では電流が流れ込む端子で、コレクタとベースに流れる電流の和の電流が流れる。 

 

MOSFET

G:ゲート ソース端子との間の電圧によりドレインソース間の電流を制御する端子Nチャンネルではソースより高い電圧でドレインソース間が通電しPチャンネルではソースより低い電圧を加えることでソースドレイン間が通電する

S:ソース Nチャンネルでは電流が流れ出す端子でPチャンネルでは電流が流れ込む端子ゲートとこの端子の間の電圧で駆動するMOSFETの特性上MOSFETを駆動する基準となる電圧を取る端子である。

D:ドレイン Nチャンネルでは電流が流れ込む端子でPチャンネルでは電流が流れ出す端子。

 

IGBT

G:ゲート エミッタとこの端子との間の電圧でコレクタとエミッタ間に流れる電流を制御する端子

E:エミッタ 電流が流れ出す端子で、ゲートとこの端子との間の電圧で駆動するIGBTの特性上、IGBTを駆動する基準となる電圧を取る端子でもある。

C:コレクタ 電流が流れ込む端子

 

トランジスタとMOSFETではnpnpnp型、NチャンネルPチャンネルとありますが基本的にVVVFなどのパワー回路で使われることが多いのはnpn型やNチャンネルです。理由としては素子自体の性能が良いということや、ベース・ゲートに電流や電圧をかけるとメイン電流が流れるのでわかりやすいといったことがあります。なお、電子回路レベルの電流が少ない場合でもnpn型・Nチャンネルが使われることが多いです。しかし、パワー回路ではベース・ゲート駆動用の電源が用意できないなどの都合でpnp型やPチャンネルを使う場合もあります。詳細は次回とします。

 


 

半導体スイッチの用途

半導体スイッチはその名の通りスイッチをするための部品ですので、電気指令でスイッチをオンオフする回路で使われます。LEDを点滅する回路であったり、モータを回転させる回路であったりスイッチをする必要のある個所では様々な箇所で使われますね。

 

半導体スイッチの比較

それぞれの半導体スイッチの簡単な性能の比較をしたいと思います。性能的に大なり小なりをつけてますが、多少の前後はあるかなあと思います。

スイッチング速度

MOSFET>IGBT>トランジスタ>サイリスタ

スイッチできる速度の差はこのような感じになっています。電車のVVVFでもパワートランジスタを使った車両(2070番台とか)はかなり低音が流れるのに、IGBTを使ったVVVFは比較的高い周波数が聞けますね。さらにSic-MOSFETの車両(323系など)はもっと高い音が聞こえてきますね。このことからも直感的にわかると思います。まあ、GTOサイリスタはパワートランジスタに近い感じの音が聞こえてきますので、スイッチング速度は遅いってことがわかります。

 

耐電力(耐電圧・耐電流)

サイリスタ>IGBT>トランジスタ>MOSFET

イメージ的には古い車両にあるトランジスタのほうが耐電流が高そうですが、少なくとも近年の世界ではIGBTのほうが性能高い模様です。電車のVVVFで新しい世代のほうが性能が低くなるのは、半導体技術が進歩して性能が相対的に低い素子でも電車を走らせられるようになったというのが大きいです。

 

半導体スイッチでの損失

ダイオードの回でもありましたが、半導体スイッチにも損失というのもが発生します。ダイオードでは計算可能な損失は順方向の電圧降下と順方向の電流の積の損失だけでしたが、半導体スイッチでは半導体を電流が通るうえで発生する損失のほかに、スイッチのON/OFF時にも損失が発生してしまいます。損失はそれぞれ別途で計算をしてから足し合わせることで求めることができますので、今回はそれぞれ別々に考えたいと思います。

半導体を電流が通るときの損失

わざわざ、題名をこんなに長く書いたのには理由があります。それは半導体を電流が通るときに発生する損失の発生原理がトランジスタ・IGBTMOSFETで違うからです。

トランジスタ・IGBTでは半導体に流れる電流によらずほぼ一定の電圧が半導体で消費されます。これはダイオードと同じで順方向電圧というものです。順方向電圧と順方向の電流の積が損失となるわけです。

これに対してMOSFETでは半導体に電流によらずほぼ一定の抵抗が発生します。これをオン抵抗と言います。つまり、オン抵抗と電流の2乗との積で損失が発生します。

トランジスタとIGBTでは流れる電流に比例して発熱量が増えるのに対して、MOSFETでは流れる電流の2乗に比例して損失が発生します。損失の増え方をざっと簡単なグラフで見てみましょう。

比較1

このグラフでは横軸が電流で、縦軸が損失です。つまり、電流が少ない状態ではMOSFETは損失が少ないですが、電流が増えると圧倒的に損失が増えるということです。

しかし、実際にトランジスタ・IGBTMOSFETでどちらの方が損失が少ないかというと、基本的には電圧が低い回路ではMOSFETの方が損失が少なく電圧が高い回路ではトランジスタ・IGBTの方が損失が小さくなります。理由は、MOSFETは構造的に耐圧を高くすると半導体の厚みが増しオン抵抗が高くなってしまうからです。

 

比較

実際に秋月で売られている部品同士で比較をしてみます。条件は価格と耐圧が近いことにします。

耐圧が50V程度の場合

トランジスタを2SC1061C(耐圧50V  35 順方向電圧1.0V)MOSFET2SK4017(耐圧60V 30 オン抵抗0.07Ω)として比べてみます。条件的にはFETの方が悪いです。

比較2

MOSFETの方が条件が悪いにもかかわらずMOSFETの許容電流の範囲(トランジスタの許容範囲超えてるのは無視)では圧倒的にMOSFETの方が発熱が少ないことがわかります。つまり、低圧で低電流な場合ではMOSFETは圧倒的に有利なわけです。

 

耐圧50Vで大電流の場合

トランジスタ系の素子で低耐圧かつ大電流の素子が秋月では売られていません。そのため、トランジスタ系のみ耐圧が高いもので比べてみます。IGBTRJH60F6DPK(耐圧 600V 300円 耐電流85A 順方向電圧1.75V) MOSFETTK100E06N1(耐圧60V 160円 耐電流100A オン抵抗1.9mΩ)で比べてみます。

比較3

トランジスタ系の素子は耐圧を無視しても最も電流を流すことができる素子を選びました。耐電流を下げるともう少し順方向電圧が低いものもありますがせいぜい2割程度下がるだけです。この場合でもMOSFETは発熱量がトランジスタに比べて圧倒的に小さいことは明らかです。つまり、低圧の回路では圧倒的にMOSFETが有利なことがわかります。

 

耐圧が600Vの場合

IGBTGT50JR22(耐圧600V 320円 順方向電圧1.55V) MOSFETTK31J60W(耐圧600V 320円 オン抵抗0.073Ω)で比べてみます。最初の50Vで部品をそろえた時と条件を合わすためにまずは5A以下のグラフを見てみましょう。

比較4

耐圧が高くなったのに先ほどと同じようなグラフになりました。電流が少ないと、この程度の耐圧でもMOSFETが勝ってしまうのです。続いてMOSFETの耐電流である30Aまで電流を増やした場合を見てみましょう。
比較5

 20Aを超えたあたりでやっとMOSFETの発熱がIGBTの発熱を上回りました。このように電圧が高くてかなりの大電流を扱う場合(大電力)IGBTが有利なのです。

 

以上より低圧の回路ではMOSFETを使う方が、圧倒的に発熱が少なく高圧大電流の回路ではトランジスタ系の素子の方が発熱が少ないことが明らかになると思います。つまり、鉄道ぐらいの大きさになればMOSFETよりIGBTの方が圧倒的に発熱が少なくなるのでIGBTがよく使われてきたというわけです。

これより、電圧も比較的低くて電流も少ない電子工作レベルではMOSFETが適切な素子と言えますね。

 

スイッチング損失

スイッチング損失はスイッチをON/OFFするときに際に発生する損失のことです。先ほどの順方向電圧と電流の積による損失やオン抵抗による電流の2乗の損失に比べると小さなものにはなりますが、スイッチ速度が比較的遅いトランジスタやIGBTで高い周波数でのスイッチングを行うと、損失は大きなものになります

なお、ここでのスイッチングの周波数というのは出力正弦波の周波数ではなく正弦波を生成するためのPWMの周波数のことです。

スイッチング損失というのがなぜ発生する理由を説明します。半導体スイッチがON/OFFをするときは瞬間的にON/OFFするのではなく少し時間をかけてON/OFFの動作をします。その様子を表したグラフを見てみます。
オン時間

Iと書かれている線がON時に半導体スイッチに流れる電流を示していて、Vが半導体スイッチにかかる電圧を示しています。そして、電流が10%から90%になる間の時間をtr(立ち上がり時間)としています。

このグラフより、半導体スイッチにある程度の電圧がかかっているのに電流が流れているタイミングがあることがわかります。スイッチング損失はこの時間に発生します

また、半導体スイッチをOFFにするときにも同じように損失が発生します。

 

スイッチング損失の損失の計算は以下の式になります。

Ion:オン時に半導体スイッチに流れる電流[A]

Voff:オフ時に半導体スイッチにかかる電圧[V]

tr:半導体スイッチの立ち上がり時間[s]

tf:半導体スイッチの立ち下り時間[s]

f:スイッチング周波数

P:損失[W]

スイッチ1

この式は、1回あたりの発熱量[J]に周波数をかけて1秒当たりの発熱[W]にしたものです。

半導体スイッチの立ち上がり立ち下がり時間が比較的遅い素子では損失がスイッチング周波数が高いと無視できない程度になります。

 

トランジスタ、IGBTMOSFETのスイッチング損失を確認します。条件と使用する素子は以下の通りです。

オフ時の電圧:100[V]

オン時の電流:5[A]

スイッチング周波数:1[kHz]

トランジスタ:2SC2837(立ち上がり時間0.2μs立ち下がり時間 1.1μs)                 

IGBT:RJH60F6DPK(立ち上がり時間80ns立ち下がり時間 74ns) 

MOSFET:2SK2698(立ち上がり時間50ns立ち下がり時間 65ns)     

スイッチ2

上からトランジスタ、IGBTMOSFETの順になっています。トランジスタの立ち上がり立ち下がり時間が長いので圧倒的に損失が大きい結果となりました。

スイッチング損失は、半導体スイッチを電流が通るときに発生する損失に比べるとはるかに小さいものとなっています。今回のように電圧が比較的低く、スイッチング速度もそこまで大きくない場合は損失が小さいですが、電圧が高くて高速スイッチングを行う場合では無視できない程度の損失にもなります。

電車位の規模だと、この損失も大きくなるので、立ち上がり立ち下がり時間が長いパワートランジスタやサイリスタ系の素子で高速なスイッチングを行うと損失はとんでもなく大きいものになり、非効率と言えます。パワートランジスタやGTOサイリスタのインバーター音が低いのもこれも理由の1つです。

 

半導体スイッチの選定方法

今回のお話で最後のお話として、半導体スイッチの選び方そして取り付ける放熱板の選び方のお話をします。

まず、半導体スイッチを選ぶにあたってトランジスタを使うか、IGBTを使うか、MOSFETを使うかの3択があります。基本的には100~200Vを超えるような比較的高い電圧で10Aを超えるような大電流を流す場合はIGBTを選択し、これ以外の場合はMOSFETを選ぶのが無難です。トランジスタはIGBTMOSFETで最適な部品が見当たらない場合に使うとよいでしょう。

 

型番の選び方

単純にデータシートに書かれている耐電流と耐電圧を見て決めるのはいけません。理由は半導体スイッチには損失がありその損失が熱として放出され半導体の許容温度を超えるからです。

 

損失による半導体の温度は以下のような式で表せます。

T:温度[]

P:発熱量[W]

R:熱抵抗[/W]

T = P×R

単位から考えると簡単だと思います。発熱量はもちろん半導体スイッチに電流が通るときの損失とスイッチング損失を足し合わせたものです。

 

例として、MOSFETTK100E06N1にデータシートに書かれている最大電圧印加時に最大電流を流した場合の温度を計算してみます。

オン抵抗による損失

100^2*0.0019=19[W]

1kHzでのスイッチング損失は

(1/6) *100*60*(67+64)*(10^-9)*1000=0.131[W]

足し合わせて

19.131[W]

となります。そして、放熱板を付けない場合の熱抵抗は88.3[/W]なので、温度は

19.131*88.3 = 1689.2673[]

となります。温度的に考えると鉄が溶ける温度よりもさらに上の温度です。もちろんこんな温度に半導体が耐えるわけがありません。つまり、データシートに書かれている最大電流はあくまで相当な放熱対策をした場合の値というわけです。

型番を選定するときは、発熱量と放熱性を考えて部品制定をする必要があります。

 

選定の方法は以下の2つの方法があります。

・耐電流に対して使用する半導体を選び、発熱量に合わせた放熱板を選定する

・放熱板のサイズをあらかじめ決めておき、耐電流より最大のオン抵抗か順方向電圧降下を求め、それを満たす半導体を選ぶ

 

まずは、前者の選び方の計算方法です。まずは発熱量を計算します。

Ion:オン時に半導体スイッチに流れる電流[A]

Voff:オフ時に半導体スイッチにかかる電圧[V]

Ron:MOSFETのオン抵抗[Ω]

VCE:トランジスタ・IGBTの順方向電圧[V]

tr:半導体スイッチの立ち上がり時間[s]

tf:半導体スイッチの立ち下り時間[s]

f:スイッチング周波数

P:損失[W]

 

18/01/24追記 MOSFETのON抵抗は温度が最大の時のオン抵抗で計算を行う必要があります。温度が最大の時のオン抵抗はデータシートのグラフを確認してください

スイッチ3

このように発熱を求めることができます。そして、放熱板を選定する上で必要なパラメータである熱抵抗を計算します

Tair:外気温[]

Tj:半導体の許容温度[]

P:損失[W]

R:熱抵抗[/W]

スイッチ4

こちらも単位から考えると簡単だと思います。

これで熱抵抗が求まりましたが、この値の熱抵抗を持つ放熱板を取り付けてはいけません。理由は半導体と放熱板の間にも熱抵抗が発生するからです。その熱抵抗は半導体内部と半導体のケースの間、そして半導体のケースと放熱板の間です。

半導体の内部とケースの間の熱抵抗はデータシートに書かれていますのでそれを利用できます。

そしてケースと放熱板の間の熱抵抗は間に挟む絶縁シートなどにより異なります。その計算方法は以下の通りです。

λ:熱伝導率[W/m*K]  Kは温度差なのでは℃として計算可

t:放熱シートの厚さ[m]

A:放熱シートの面積[m]

キャプチャ

最終的に放熱板を選ぶときは、先ほど求めた熱抵抗から半導体の内部とケースの熱抵抗とケースと放熱板の間の熱抵抗を引いた値以下の熱抵抗をもつ放熱板を使わなければなりません。

例として、先ほど100Aを流すと鉄が溶ける温度になったTK100E06N1に取り付ける放熱板の熱抵抗を計算します。

発熱量は19.131[W]で半導体の許容温度は150[]で外気温を35[]とすると

R= (150-35)/19.131 = 6.011[/W]

となります。

半導体の内部とケースの熱抵抗は0.49[/W]TO-220の絶縁シートの熱抵抗は以下のように計算します

λ:熱伝導率[W/m*K] 

t:放熱シートの厚さ[m]

A:放熱シートの面積[m]

スイッチ5

これより放熱板の熱抵抗は以下の値を下回る必要があります。

Rheatsink = 6.011 – 0.49 -1.087 = 4.434 [/W]

実はこの値の下回る放熱板は秋月では売られていないです。つまり、かなり大型のヒートシンクが必要というわけです。

ヒートシンクが見つからない場合は最初に戻って、別の半導体スイッチを探して再度計算します

 

放熱板の大きさから大体のオン抵抗か順方向電圧の目安を算出して、半導体スイッチを探す方法

放熱板を選ぶと熱抵抗がわかります。その熱抵抗に、半導体の内部から放熱板までの熱抵抗として仮に2[/W]を足し合わせます。続いて、半導体の許容温度ですが大体150[]程度のものが比較的多いので、許容温度150[]、外気温は35[]と仮定して計算をします。スイッチング損失については比較的小さい値ですので省略して考えると、以下のように最大発熱量が求まります。記号は今までと同じなので定義は省略します。

スイッチ6

許容発熱量の概算が求まれば必要な順方向電圧かオン抵抗は簡単に求まります。
MOSFET
17/12/24 式訂正 (入力ミスで^2のところをROOTしていました)

ここで求めた順方向電圧、オン抵抗と最大順方向電流そして耐圧を満たす素子を選びます。そして、選んだ素子のデータシートから各種パラメータを正式に導き出し、実際の発熱を計算します。この温度が許容温度を下回っていれば選んだ素子が問題なく使用可能というわけです。

 

安全率

安全率とは実際に使用する際に必要な性能に対して設計段階で持たせた余裕の率です。電子工作レベルでの半導体スイッチの選定では最初のオン時に流れる電流の段階で実際に流す電流の1.5倍から2倍程度の電流まで流しても大丈夫なように設計すれば問題ありません。

今までの式のIonは実際に流す電流の1.5倍から2倍程度の電流値として計算をすればよいでしょう。